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大阪府や堺市などが推進してきた百舌鳥・古市古墳群の世界遺産登録が確実となったが、その陰で、古墳群と関係の深い泉北の須恵器窯跡の多くが消滅の危機にあることが分かった。近畿大学医学部の移転や、ビッグバン周辺での新たな都市公園の建設によって多くの窯跡が破壊されるおそれがあるためで、堺市はこれまで窯跡の保存について全く検討していない。泉北の歴史愛好家グループの間では窯跡を守るための会を結成し、市に保存を求める動きもある。
近大予定地には8基か 堺市、住民説明せず
濁り池の周遊路計画地にも
泉北ニュータウンにあった窯跡は、ニュータウン造成前に府教委などが発掘調査。約400基の窯跡を確認し、2500点以上の須恵器を採取した。
窯跡の多くはニュータウンの建設によって破壊されてしまったが、一部は保存され、市民に公開されている。そのほか、公園や緑地には、発掘後、土を埋め戻して、そのままになっている窯跡もある。
今回、近大医学部が移転する予定地には8基の窯跡が、新しい泉ヶ丘公園予定地には13基から16基の窯跡があるとみられる。
特に公園予定地内にある濁り池の周りには8基の窯跡が並んでいる場所があるが、市は池周辺に周遊路や緑道を整備する予定で、窯跡がすべて破壊される恐れもある。
公園整備について、堺市は住民説明会などで「住民の意見も聞いて整備をすすめる」と説明しているが、窯跡があることは説明せず、窯跡をどうするかの方針も決めていない。
保存会結成めざす 泉北の歴史愛好家ら
こうした市の方針に、歴史愛好家グループなどは不安を募らせ、保存会結成の呼び掛けを始めた。
呼び掛けの中心となっている新保憲一さん(庭代台)は「百舌鳥・古市古墳群の世界遺産登録が話題となっているが、須恵器窯跡もできるだけ後世に残すべきだ。堺市や近大は保存や公開を考えてほしい」という。